阪南2区北側海浜緑地の埋立事業は、大阪府 の財政状況の逼迫により、緑地はもとより干潟が着工される見通しはほぼ失われていました。
このような状況の中、関西電力(株)が堺7-3区においてLNG基地の整備計画を打ち出し、大型 LNG船の着桟が可能となる桟橋の建設を行うこととなりました。この際、泊地の浚渫により発生する約63万m2の浚渫土の処分は、当初計画では潮岬沖に運搬され、海洋投棄されることになっていました。
そこで、大阪府港湾局は関西電力(株)と協議し、このうちの30万m2を用いて南側干潟が造成されることとなりました。 このことは海洋投棄による海洋汚染を防ぐ一方で、干潟という貴重な自然を再生し、なおかつ潮岬沖での処分に見合うコストで干潟造成を行うという画期的な取り組みとなりました。
また、地元の漁業関係者にとっても、海域生物の成育場所ができることで自然の回復につながるという面でメリットがあり、三者両得の事業としても注目されました。泊地浚渫が LNGの受け入れ計画にあわせ迅速に工事を進めたため、短期間(平成14年7月~平成16年2月)の内に 5.4haの干潟が出来上がりました。本造成事業は、民間企業と地方自治体が連携し浚渫土砂処分と干潟の再生を同時に行ったことなどが評価され、平成16年に土木学会関 西支部技術賞、地盤工学会関西支部地盤技術賞をW受賞しました。
造成場所は沖合1km、水深8~12mという大 水深であり、また、高含水比で非常に軟弱な浚渫粘土を用いるため、1潮間帯を含む設計勾配が確保できるか2表面に覆砂を行った時に砂が埋没しないか、という課題がありました。
これらを解消すべく、室内実験と現地試験施工による検討が重ねられ、1勾配の確保については中仕切り堤を構築し、その内側に潮間帯部分を確保する方法が取られました。また、2覆砂の浚渫粘土中への潜り込み防止策として、大規模海洋工事では初となる東洋建設(株)の生分解性シートが採用されました。シートの敷設面 積は21,000m2に及びました。
人工干潟の造成では、環境への配慮から、ポリ乳酸を原料とする生分解性のシートが利用されました。シートは一般的に4~5年程度で水と炭酸ガスに分解されます。
また、メッシュ状にすることで、生物の地中への移動を妨げないように設計されています。